選考委員長 島田 京子

選考の結果概要

 “いのち”に取り組むNPOのスタッフの育成を通じた組織基盤強化に助成するこのプログラムは、2回目を迎え、公募対象地域を首都圏から全国へ拡大した。また、前年からの助成対象団体への継続助成も開始した。その結果、49件の応募をいただき、それに対して6件に、計1,000万円の助成を決定することになった。
今回、対象地域を拡大したこともあり、件数では昨年の2倍以上の、“いのち”に関わる多彩な活動を行うNPOから応募があった。また、高い専門性を持つスタッフの育成を計画しているNPOが多かったことも特徴的であり、本助成の目的に合致するものとして喜ばしい傾向であると考える。

選考の経過

 今回の公募は2006年9月から約1ヶ月半にわたって行われ、先に述べたように49件の応募があった。内3件は継続助成の応募であった。その後、専門家・NPO実務経験者などからなる選考委員5名が、選考委員会に先立ち応募書類全件を読み込み、本助成プログラムの趣旨に照らして設けた選考基準に基づくABC評価を行い、選考委員各々が、新規4件、継続2件を推薦した。

 1月13日に行われた選考委員会では、推薦のあった1件ごとに各委員の推薦理由や助成にあたっての課題などを確認し合いつつ議論を重ね、助成候補を新規6件、継続2件まで絞り込んでいった。

 選考の主な論点は、今回育成対象として予定する人材が、組織としての仕組みの中で高い専門性により、通常活動の質の向上や活動の波及効果に繋がるよう配慮されているかどうかであった。例えば、スーパーバイザーの存在や、社会保険への加入などを含む雇用環境の整備についても評価の対象となった。このような環境整備を行なうことは、対象となるスタッフと雇用側の双方の覚悟が求められることでもある。

このようなプロセスを経て助成候補となった案件について、選考委員会で出された疑問点や計画実現の可能性などを確認するため、事務局担当者が現地を訪ねてインタビューを行った。2月8日にはそのインタビュー報告を踏まえて、委員長決裁というかたちで4件の新規助成および2件の継続助成の対象と助成額を決定した。

応募および助成の特徴

 第2回目となった今回は、全国から多彩な団体からの応募があったことは先にも述べたが、新規応募団体の傾向としては、障害者、DV被害者、引きこもり・不登校・ニート、病気・難病、外国籍住民などを支援対象とする活動が上位5位を占め、他に、路上生活者、人身売買、児童労働、食の安全などがあった。新規に助成対象となった分野は、子ども、外国人、暴力被害者などの支援に取り組む分野となった。これらは、子どもや身近な人間の安全保障の視点から重要な活動であるが、人権擁護の観点から社会に表出しにくいため、支援を得にくい重い課題であろう。

 また、有給常勤スタッフ数の傾向としては、今回、0〜2名という小規模な団体が約50%を占めたものの、2〜5名が約40%あり、本助成プログラムの対象としては適切な規模の団体からの応募があったと思う。助成によって行なわれるスタッフ育成計画の傾向は、中核スタッフの育成を目標とし、通常業務や研修などの実施による専門性やコーディネート力の向上、成果物のとりまとめを通じた業務の見直し・システム化などを通じた組織基盤の強化に向けたものである。このことは、活動の波及効果を高めていく可能性にもつながるであろう。雇用環境の整備の観点から、本プログラムでは社会保険への加入を求めているが、今回の助成対象者は全て加入者となっている。

 なお、応募団体の所在する地域を見てみると、東京都が33%、大阪府が11%、愛知県が9%と、大都市が多く、関東ブロックで約4割、近畿ブロックで約2割を占め、関東以北からの応募が極めて少ないことが特徴的であった。結果として、新規の助成対象となった団体は、東京2、京都1、大阪1と大都市に限られた。今後は、助成先が地方都市にも広がっていくことを期待したい。

 前年度助成対象となった団体への継続助成2件については、1年目の着実な取り組みにより助成の成果が現れていると判断できる。助成により、育成対象スタッフの目的意識が明確になり、専門性の向上も見られている。また、そのスタッフのモチベーションの向上により、組織内での報告や業務を通じて情報や経験の共有化が図られたことも、成果としてあげることができる。組織としての課題意識もより明確になってきており、今後の発展が期待される。

来年度への期待

 昨年、これまでは対象となりにくかったNPOの通常活動における人件費などに助成する数少ないプログラムとしてスタートしたが、今回の応募の傾向を見ても、その必要性、重要性がこれからも高まるものと予想される。今回も大都市を中心とした活動の応募が多かったが、今後、より広い地域から、それぞれの地域に根ざした活動が公募に応えてくれることを期待したい。また、単に新任研修としての育成計画ではなく、スタッフを育成することが組織基盤の強化につながり、また、できれば活動成果がより普遍的で他の団体への波及効果が高まるよう期待したい。


2007年選考委員

選考委員長
 島田 京子   学校法人日本女子大学 事務局長
 (元・特定非営利活動法人日本NPOセンター 副代表理事)

選考委員(五十音順、敬称略)
 金田 晃一  株式会社大和証券グループ本社 CSR室 次長
 長沢 恵美子  社団法人日本経済団体連合会 社会第二本部 1%クラブ
 コーディネーター
 平川 和子  東京フェミニストセラピィセンター 代表
 松原 明  シーズ・市民活動を支える制度をつくる会 事務局長


  



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