選考委員長 島田 京子

選考の結果概要

 人の“いのち”を守り力づける「身近な人間の安全保障」分野で活躍するNPOの、スタッフと組織の育成に助成するこのプログラムは、このたび3回目の公募と選考を行った。今回は全国より44件(継続助成3件、新規助成41件)の応募をいただき、それに対して5件に計946万円の助成を決定した。

 今回も“いのち”に関わる多彩な活動を行うNPOから応募があった。内容もスタッフの育成と同時に、組織全体も次のステージに進もうとする意欲的な取り組みが見られた。「スタッフの育成」と「組織力の強化」を助成の柱とした本助成の趣旨に応えたものとして歓迎している。

選考の経過

 今回の公募は、2007年10月から約1ヶ月間にわたって行った。選考委員会に先立ち、専門家・NPO実務経験者により構成される選考委員5名が、応募書類全件を事前に読み込み、本助成プログラムの趣旨に照らして設けた選考基準に基づくABC評価を行い、選考委員各々が、新規4件、継続2件を推薦した。
 2008年1月22日に行った選考委員会では、推薦のあった1件ごとに各委員の推薦理由や助成にあたっての課題などを確認し合いつつ議論を重ね、助成候補を継続2件、新規6件まで絞り込んだ。
 選考の主な論点は、組織にスタッフを育成する基盤があるか、育成の目的と方法が明確か、計画がスタッフ個人の専門性の向上にとどまらず組織の育ちにつながるか、育成対象として予定する人材に専門性を高める基礎力があるかなどであった。例えば、組織の育成基盤としては、今年も社会保険への加入を含む雇用環境の整備も評価の対象となった。NPOも他のセクターと同様に、スタッフが安心して活動に専念できる雇用環境をつくることが大切で、それが活動の質的向上にもつながると考えた。
 このような検討を経て助成候補となった案件について、選考委員会で出された疑問点や計画実現の可能性などを確認するため、事務局担当者が現地を訪ねてインタビューを行った。
 2月19日にはそのインタビュー報告を踏まえて、委員長決裁というかたちで継続助成2件と新規助成3件の助成対象と助成額を決定した。

応募および助成の特徴

 新規応募団体の傾向としては、支援対象分野として障害者、外国籍住民、引きこもり・不登校・ニートなどが多く、昨年と同様の傾向であったが、新たに多重債務・自殺防止分野からの応募が目立った。一方でDV被害者支援は昨年に比べて減少した。今回、新規に助成対象となった分野は、引きこもり・不登校・ニート、独居高齢者などの分野となった。
 また、応募団体の規模としては、比較的小規模な団体が多かった。常勤スタッフ数(有給で週3日以上活動)では、0〜1人が約2割、2〜3人が約4割、4〜5人が約1割。前年度の支出総額からみた事業規模は、500万円未満が37%、1,000〜3,000万円17%、3,000〜5,000万円12%であった。常勤スタッフ数は、当プログラムで想定している2〜5名が約半数(47%)であったことから、適切な規模の団体からの応募があったと思うが、事業規模としては5,000万円〜1億円未満の中規模の団体からの応募も期待したい。
 さらに団体の所在地は、全国公募ではあるが大都市圏に集中しており、関東地域で約半数(うち東京都24%)、近畿地域で約1/4(大阪府10%、兵庫県10%)であった。結果として助成対象は大阪、山形、佐賀となり、昨年と較べて大都市圏以外の団体が含まれ、望ましい傾向となった。
 具体的なスタッフの育成方法は、OJTや外部講師を招いた研修、外部の講習会・研修会への参加、他団体への見学・研修などが多かった。また組織としてのスタッフ育成フォローの方法は、本プログラムで実施条件としているスーパーバイザーの設置と定期レポート以外に、研修担当者の配置と研修時のバックアップ調整、定期会議による情報共有などが計画されていた。さらに雇用環境の整備面では、ボランティアやアルバイト・スタッフの正職員化、社会保険の加入などがあり、育成の取り組み全体としては、これらを組み合わせた方法が採用されていた。
 今回新規助成の対象となった団体の計画は、長年の実績を持つ団体がNPO法人化を機に、世代交代と同時に、新たな事業の展開を目指すもの、次世代の中核スタッフの育成を目指して、専門性向上と担当業務の運営全般を担えるスタッフ育成を目指すものなど、OJTや外部研修などを通じて育成に取り組もうとするものである。
 なお、新規3件のうち2件は同様の活動分野である。しかしながら、それぞれの団体の成り立ちや地域特性などから、組織の育成方法や取り組み方に大きな相違が見られたことは、興味深い。この助成を契機として、今後、互いの発展に資するような交流や学びが生まれることも考えられるのではないだろうか。
 継続助成2件は、いずれも1年目の助成期間において着実で充実した取り組みが行われており、業務や研修を通じて専門性を高め、ネットワークを作り、コーディネート力を高めている。助成2年目で取り組む次の段階の目標や課題も明らかにされており、今後の展開が期待される。

来年度への期待

 本助成プログラムは、これまで対象となりにくかったスタッフと組織の育成支援プログラムであり、しかも人件費を中心に助成する数少ないプログラムとしてスタートした。これまでの応募状況や助成対象プロジェクトの支援を通じ、その必要性、重要性はさらに高まっていると考えている。
 来年はさらにスタッフ個人にとどまらず組織の育ちにつながり、被益者への支援の質も向上するような、意欲的な取り組みを期待している。


2008年選考委員

選考委員長
 島田 京子 学校法人日本女子大学 事務局長

選考委員(五十音順、敬称略)
 金田 晃一 株式会社大和証券グループ本社 CSR室 専任担当
 戈木 クレイグヒル 滋子  首都大学東京 健康福祉学部 教授
 長沢 恵美子 社団法人日本経済団体連合会 社会第二本部
1%クラブ コーディネーター
 松原 明 シーズ・市民活動を支える制度をつくる会 事務局長


  



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