選考委員長 島田 京子

選考結果の概要

 「身近な人間の安全保障」分野で活躍するNPOの、スタッフと組織の育成に助成するこのプログラムは、今回で5回目を迎え最終年度となる。従って、今回は、2009年度に新規助成を受けた団体のみを助成の対象とさせていただいた。応募があった3件を選考の結果、3件の採択、計560万円の助成を決定した。
 いずれの団体とも、“いのち”に関わる先駆的で専門性の高い意欲的な活動である。そして、これまでのプロジェクト助成では対象となりにくい人件費・研修費などスタッフの育成を必要とし、より良いサービスの提供と安定的な組織運営を志している団体である。
 選考にあたり、継続助成としてより重視したことは、この1年間の助成でどのような成果があったか、また、これからの助成でスタッフの育成がさらに進み、それが組織の安定的・発展的運営にどうつながるかという点であった。すなわち、本助成の願いである「人も組織も、ともに育つ」ことである。時間はかかるかもしれないが、活動の発展への努力だけでなく、その基盤となる「人も組織」もともに育つよう、今後も、じっくりと取り組んで欲しいと願っている。

選考の経過

 2009年11月6日から約1ヶ月の公募期間を経て、昨年度に新規助成を受けた4件のうち、3件の継続助成の応募があった。その後、専門家・NPO実務経験者により構成される選考委員5名が、応募書類とこれまでに提出されたスタッフ育成レポートを事前に読み込み、本助成プログラムの趣旨に照らしてもうけた選考基準に基づくABC評価を行って、選考委員各々が、2件を推薦、1件を準推薦した。2010年1月19日に行われた選考委員会では、一件ごとに各委員の推薦理由や助成にあたっての課題や助成額などを確認し合いつつ議論を重ねた。
 審議では、この一年間の報告書と併せ、事務局担当者が現地を訪ねて行ったインタビューの内容を踏まえて行った。審議の主な論点は、スタッフ育成が計画に沿って実施され、成果をあげつつあるかどうか、新規助成の際に選考委員会で指摘のあった疑問点や課題に対してどのように取り組んできたか、今後の課題をどのように認識しているか等であった。

継続助成にあたっての考え方

 今回継続助成を決定した団体の評価できる点と課題は、次のとおりである。

<評価できる点>

  • 高まる社会的ニーズに対して、高度な専門性の育成・向上に努めている。
  • 昨年度の助成が、スタッフ育成に有効に活かされている。
  • 次世代スタッフへの継承、リーダーの世代交代への努力が行われている。
  • 労災保険、雇用保険など社会保険への加入や、NPO法人化を進めるなど、組織強化に向けての努力が行われている。
  • 助成対象スタッフの育成にとどまらず、組織内での情報共有や研修成果の共有に努めており、組織全体への波及効果もみられる。

<今後の課題>

  • いずれの団体も団体内人材の能力だけに解決策を求める傾向があるが、外部のより高い専門的能力や、団体の活動にとって固有の専門能力以外の多様な知見を活用した方が、団体にとって学ぶことも多く、あるいは周囲への波及効果があると思われる。
  • また、そのような能力を借りることは、スタッフへの過剰な期待やオーバーワークによりスタッフ個人が疲弊してしまうことを防ぐためにも必要と考える。
  • 特に、団体の活動にとって固有の資格を持つスタッフの育成だけでなく、外部にある人材やボランティアの能力も活用できるよう、内外の人材をコーディネート(マネジメント)できるスタッフを育てていくことが重要なように見受けられる。

 いずれの団体も、人の“いのち”を大切にする社会への実現にとって貴重な活動を地道に担っていることに敬意を表したい。これからも、この助成プログラムが目指した、その活動を支えるスタッフの専門能力と運営能力が日常的な活動に十分に活かされ、組織が持続的に発展していくことを願って止まない。


2010年選考委員

選考委員長
 島田 京子 学校法人日本女子大学 共同教職大学院設置準備室 室長

選考委員(五十音順、敬称略)
 戈木 クレイグヒル 滋子  慶應義塾大学 看護医療学部 教授
 鈴木 歩 特定非営利活動法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会 コミュニケーション・ディレクター
 長沢 恵美子 一般社団法人日本経団連事業サービス 総合企画・事業支援室 参事
 松本 哲 株式会社大和証券グループ本社 CSR室長


 



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