第1回の選考を終えて

選考委員長 樺山 紘一

 花王・コミュニティミュージアム・プログラムは、今回、公募の形をとって出発した。「社会とミュージアムをつなぐ」ことで、両者ともに新しい活力を発掘できるはずだという見通しのもとに企画された。とはいえ、この趣旨に、どれだけの人びとや団体が関心を示し、積極的に応募していただけるかについては、率直にいって、少なからぬ不安を抱いたことも事実である。しかし、それはまったくの杞憂におわった。じつに154件の応募が全国からよせられ、しかもそのほとんどは助成の趣旨を適切に理解してのものであった。このため、選考にあたっても、予想以上の慎重な精査が求められた。最終的には16件の助成を決定したが、選にもれた案件についても、高い評価を受けたものが多く、委員会としては、苦渋の決断を迫られた。

 当初から想定したモチーフは、2つある。第1に、団体やサークルが、ボランティア、NPOなどのかたちをとりつつ、内的な意志にもとづいて特定の目標を共有し、公共の用益を実現しようとする活動、つまり本来の意味での「市民社会(シビル・ソサエティ)」を結成することを支援したい。その活動が、ミュージアムとの連携を契機として実質化できればとの願いである。
 第2には、そうした市民・地域の活動からの刺激や支援をうけて、多様なミュージアムが、それらとのあいだで新たな関係性を発見して変革への道筋をみいだすことである。ミュージアムの専門性と市民の自発性との協働が、従来にない結実をうみだしうるであろう。

 以上のような2つのモチーフを念頭におき、それらの実現に豊かな可能性を察知させる16の案件を、助成対象として決定したという次第である。何分にも、こうした試みはわが国にあっては前例に乏しく、当プログラムの成否については、わたしたちも絶対の確信をもってはいない。しかし、これまた斬新な手法ともいえるが、助成を受ける諸団体のあいだで、できるだけ緊密な相互のコミュニケーションを保つべく、交流会の場を設けている。諸団体は、そのサイズや成立の経緯など、きわめて多様であるが、いずれもがほかの活動とのあいだでの連携や交流を必要としていることは自明である。

 初回となる今回の助成や活動を貴重な経験と教訓として、今後とも的確な方向選択に努めたい。選考委員会は同時に、諸団体とのあいだでの協働をも志向するという意味では、みずからもアクティブな主体でありたいと考えている。関係の諸方面からのご援助とご指導を心よりお願いするものである。


2007年選考委員

選考委員長
 樺山 紘一   東京大学 名誉教授・印刷博物館 館長

選考委員(五十音順、敬称略)
 太下 義之  三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 
 芸術・文化政策センター長
 片山 正夫  財団法人セゾン文化財団 常務理事
 金山 喜昭  法政大学 キャリアデザイン学部 教授
 嶋田 実名子  花王株式会社 コーポレートコミュニケーション部門
 社会貢献部長


  



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