選考委員長 実吉 威

選考にあたって

 昨年3月11日に発生した東日本大震災は多くの災厄をもたらしました。大きな災難は今もなお続いていますが、その中で、多くのボランティア、NPOの活躍は一筋の希望となっています。大震災から1年を前にスタートした本プログラムは他の助成プログラムと比べて、被災地の再生のために「ユースの関わりを応援する」という点が特色です。以下に挙げるAコース/Bコースという2つのコースが用意されていますが、いずれも被災者支援としての有効性はもちろんのことながらユースが主体的に参加していることが必須条件であり、活動や研究を通じてユースが成長していくことが期待されています。

 実は、選考委員のうち主催者以外の5名はすべて30〜40代の「少し前までユース」であり、東日本の被災地にも幾度となく足を運んだり、現地で活動した経験を持っています。助成金の選考の経験は多くありませんが、現場に近いこと、そして応募者の年代にも近いことが特色と言えます。さらに、私を含めて17年前の阪神・淡路大震災に何らかの関わりを持つ者も多く、十数年前に自分たち自身が育てていただいたように、本プログラムが活動への応援だけでなく、それを通じて若い人がいい経験をして成長していただければと強く願っています。今回の被災地は元々人材の流出に悩んでいた地域であり、その復興のためには復興を担う層、とりわけ次世代を担う若者たちの復興や成長を抜きには語れないからです。

 当然のことですが、他でもない、大災害の被災地支援に関わる助成プログラムである以上、完成されたきれいなビジョンやプログラムが書かれていることを求めるのではなく、被災された人や地域に関わろうという熱意、現にニーズに触れている現場感、若者らしい勢いや情熱をこそ重視しよう、応募書類には書き切れていないその向こう側をできる限りくみ取ろうという姿勢を我々は共有していました。応募書類のみでの選考にはもちろん限界がありますが、「紙の向こう側」を重視しようというのは選考委員会の一致した姿勢でした。

選考の経過および応募の特徴

 さて、今回の応募プロジェクトですが、Aコースはユースが主体となって取り組む活動・研究であり、プロジェクトの意義や実現できそうな成果ももちろん評価させていただきましたが、それと並んで、活動を通じたユース自身の経験、学び、育ちを重視するコースであるため、被災地のニーズに十分立脚していないと思われるもの、かたち上はユース主体だが実質は「大人」が企画している感が強いものなど以外は極力採択しようとしました。ユースの熱意や行動力に溢れる申請書が多く、選考委員会の議論も熱の入ったものとなりました。結果、22件、計1,057万円と予定より大幅増の採択となりました。

 Bコースについては、ユースの関わりや学びを重視することはAコースと同様ですが、規模が大きいため、計画性や組織力についても評価させていただきました。やや残念だったのは、「ユースが主体的に参加しているか」という選考基準(A/B共通)を十分踏まえられていないと思われる応募が散見されたことです。確かに、ある程度の規模のプロジェクトを責任を持って行うとなると、どうしても「大人」中心に考えたくなるのも分かりますが、そこをユース主体でチャレンジしていただきたいというのが本プログラムの趣旨です。採択させていただいたプロジェクトを見ると、復興まちづくりの過程にも子どもやユースの声を反映させようという意欲的なものや、地域の大学による企画はもちろん、地域の大学・高校との強い連携をベースとする企画も多数あり、これを通じてユースが1年後、2年後にどう成長していくだろうと楽しみな案件に数多く触れることができました。一方、着眼点や取り組みの必要性は疑いがないものの、団体の実施能力としてやや不安が残る案件もいくつかありました。被災地支援という中、どうしても前のめりになりがちな気持ちは痛いほど分かるのですが、だからこそなおのこと着実に進めていただきたいとも感じ、あえて規模縮小を提案させていただいた案件もありました。なお、Bコースについては、選考委員会後に事務局で現地インタビューを行い、委員会で出された議論等について確認し、その報告を踏まえた委員長決裁で最終決定をいたしました。その結果、こちらも12件、計2,949万円と予定額をかなり増額して採択させていただくことになりました。

 全体として、調査研究での応募が少なく、採択できた案件でも多くなかったのは残念でした。支援の活動ももちろんですが、現地と密接に関わり、市民・学生の立場から行政とはまた違った視点で街と人の復興について研究し、提言することはとても大切です。次回以降、より多くの応募があることを期待します。

 最後に、改めて本プログラムが被災地の復興の一助になること、またその地で希望を持って将来を切り拓いてゆこうとしている若い人々のために、少しでもお役に立てることを願って筆を擱きます。



2012年選考委員

選考委員長
 実吉 威 認定特定非営利活動法人市民活動センター神戸 理事・事務局長

選考委員(五十音順、敬称略)
 赤澤 清孝  特定非営利活動法人ユースビジョン 代表
 鹿住 貴之  認定特定非営利活動法人JUON(樹恩)NETWORK 理事・事務局長
 西山 志保 立教大学社会学部 教授
 仁平 典宏 法政大学社会学部 准教授
 武井 徹 住友商事株式会社 環境・CSR部長


  




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