ユースの挑戦の価値を信じて

選考委員長 実吉 威

選考にあたって

 東日本大震災からはや2年が経ちました。この文を読まれる方の多くは、被災地のどこにおいても、また被災地外に避難されている一人ひとりにおいても、「復興はまだまだ」であることをよくご存じと思います。社会の関心はやはり急速に薄れつつありますが、このプログラムに応募いただいた皆さんのような市民の支援活動が息長く、そして広範に続くことを願わずにはいられません。

 本東日本再生ユースチャレンジ・プログラムですが、2年目となる2013年度も、計83件という多くの応募をいただきました。本助成プログラムは他の助成プログラムと比べて、被災地の再生のために「若者(ユース)の関わりを応援する」という点が特色です。A/B両コースとも被災者支援としての有効性はもちろんのことながら、ユースが主体的に参加していることが必須条件であり、活動や研究を通じてユースが成長していくことが期待されています。
 ※「ユース」とは概ね10代後半から20代の若者で、主に大学(院)生などを想定しています。

 本助成プログラムの大枠は以下の通りです。Aコース(上限50万円)、Bコース(上限300万円)の2種類があり、Bコースには新規助成と昨年度からの継続助成があります。Aコースは、ユースが任意のチームやグループ等で取り組む活動・研究であり(ユースが完全に主体となっている)、Bコースは、ユースがNPOや大学(院)等の組織において主体的に取り組む活動や研究(ユースが主体的に関わっている)を対象としています。

選考の経過および応募の特徴

 応募数は、Aコースに29件、Bコース新規に42件、同継続に12件。採択数は順に23件、16件、9件の計48件(計7,817万円)。Bコース新規が最大の激戦になりました。昨年Aコースで助成させていただいた活動が今年度Bコースに応募され採択されたものもありました。このようなAコースからの発展は歓迎したいところです。

 震災から2年が経つなか、今年度の応募案件は昨年に比べて、<被災地>との距離をどう縮めるかが問われ、それにチャレンジしている案件が多かったのが特色です。遠隔地から支援を続けようという場合の物理的な被災地との距離や、被災した方はもちろん、震災直後のボランティア活動を体験した人とそうでない人との絶対的な温度差という心理的、体験的な距離。20代から30代(あるいはそれ以上)の世代が、もっと若い世代に、人生を変えるような深い体験や人と関わることの重さと喜び、そして人と関わるときに求められるスキルや知識を、なんとか伝えたいと願いながらそうならないもどかしさ。震災から時を経るに従って必然的に開いていく距離感を、様々な工夫と熱意で埋めようという素晴らしい提案がいくつもありました。

 具体的には、「交流」や「体験の共有」を重視した活動が多く、広域避難地域においては交流会のほか、コミュニティ新聞づくりの活動もありました。宿泊機能付きライブラリーによる体験と記録の伝承や、「ロールモデル」となる若者の紹介・発信といったユニークなものもあります。これらをユース自身が企画、運営する優れた活動がいくつも見られた一方、現在は「大人」による企画であっても、4年間かけて若者を企画のコアに巻き込んでいく用意周到な事業もあり、こういった活動も選考過程で高い評価を受けました。被災地内外の大学でボランティアセンターなどが学生の活動を応援するプログラムも多数あり、応募された活動は概ね高い評価を受けていました。ただ、現実に存在する大学の数からすると、もっと多くの応募があってもおかしくありません。ここはあらゆる教育機関の奮起を期待したいところです。

 遠隔地からの支援団体は、当然のことですが、自分たちがやりたい支援ではなく、現地の団体との深い連携と交流のもと、現地のニーズをしっかり踏まえなければという姿勢を持つ団体が評価されました。遠隔地からの学生ボランティアの派遣・受け入れの仕組み化・パッケージ化を意識的に進めていた団体もあり、そういったノウハウは何らかの形で共有していただければ社会の公共財ともなるでしょう。

 被災地のニーズとして、仮設住宅での見守りやコミュニティづくり、子どもの育ちの支援、住民主体のまちづくりの支援などのほか、若者の流出対策を始めとする生業支援・就業支援もいくつも見られました。さらには引きこもりやうつの人への支援、福島を巡っては現地での復興支援のほか避難先での生活支援、特に母子の支援など、長期化するなか、ニーズも個別化、多様化してきており、それらにユースが果敢にチャレンジしている様子が応募書類からも伺え、心強く感じました。

 一点残念なことは、全体として昨年同様、調査研究での応募が少なかったことです。直接の支援活動ももちろん重要ですが、被災地で起こっていることは何なのか、現地で活動しながらそれを社会に発信する若者ならではの「メッセージ力」にも期待したいところです。

 とはいえ、自然災害が残念ながら今後も続くであろうことや、いまだ終息しない原発事故に発する様々な困難に対してこれらの活動が精一杯取り組んでいる様子を見ると、私たちが彼・彼女らを支援しているのではなく、むしろ私たちが彼らに、そして彼らを通して被災地の人々に、支援されている部分すらあることを感じます。彼らが取り組む課題は私たちの課題でもあります。彼らの貴い取り組みを応援しようと着眼された住友商事さん、そしてともに企画された市民社会創造ファンドさんにも心から敬意を表し、筆を擱きたいと思います。



2013年選考委員会

 
選考委員長
 実吉 威 認定特定非営利活動法人市民活動センター神戸 理事・事務局長

選考委員(五十音順、敬称略)
 赤澤 清孝  特定非営利活動法人ユースビジョン 代表
 岩附 由香  認定特定非営利活動法人ACE 代表
 鹿住 貴之  認定特定非営利活動法人JUON(樹恩)NETWORK 理事・事務局長
 西山 志保 立教大学社会学部 教授
 仁平 典宏 法政大学社会学部 准教授
 奥谷 直也 住友商事株式会社 環境・CSR部長


  




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