転機の向こうに見えてきたもの

選考委員長 実吉 威


 東日本大震災から丸3年を前に、被災地の状況も、そして被災地を支援する活動も、転機を迎えつつあることを如実に反映していた今回の選考だった。この春で支援活動も4年目に入る。どのようなことをニーズや課題として捉え、それにどんな活動で取り組もうとするのか、応募いただいた団体も、多くが「転機の苦悩」をされているように感じた。

 まず全体の応募状況を振り返りたい。まず応募件数だが、関係者の皆さまのご尽力により、昨年度に比べてA、B両コースにおいて大きく増えた(Aコース29件→48件、Bコース新規助成42件→53件)。多くの方からの期待をいただき、選考に携わる私たちも大変嬉しかったが、その分選考は去年より厳しいものだった(Aコース、Bコース新規助成において予備審査を実施した)。

 次に応募案件の分野だが、被災地の状況変化を反映して、大きく変化している。具体的には、
 (Aコース)
   コミュニティ形成 14件(26.4%) ← 4件(11.4%)
   情報発信     13件(24.5%) ← 5件(14.3%)
   こども支援     9件(17.0%) ← 4件(11.4%)
   ボランティア派遣  4件( 7.5%) ← 9件(25.7%)
 (Bコース新規助成)
   情報発信     13件(22.4%) ← 4件( 9.1%)
   まちづくり    11件(19.0%) ← 6件(13.6%)
   こども支援     8件(13.8%) ← 4件( 9.1%)
   ボランティア派遣  6件(10.3%) ← 9件(20.5%)
などが顕著だった。(右側が昨年度)
 「活動」と「研究」の別では、研究が昨年度のA、B計4件から、計13件に大きく増えた。応募数は増えたが、しかし残念ながら採択できたのはA、B各1件と少なく、研究案件の奮起を期待したい。
 さらに、応募団体の所在地について見ると、Aは関東が半分弱、東北が3分の1強という構造は去年と変わらない。Bの方は、関東が減り(48.3%→32.1%)、東北が増えた(26.2%→37.7%)。現地で頑張る団体が増えたことを喜びたい。遠方からの支援では、近畿勢の頑張りが目立った(11.9%→22.6%)。

 さて、内容だが、被災地・被災者の状況が個別化、長期化、あるいはニーズがハードからソフトへ移行する中で、ユースとしてどういった取り組みをすればいいのか、戸惑っている様子が申請書からも感じられた。昨年まで力強い申請内容だったのが、ニーズ・課題を捉え直し、活動を転換させようとしながらもそこに悩んでいると思われる団体もいくつも見受けられた(特にAコースに顕著だった)。
 これは必ずしも否定的な意味ばかりではない。被災地の変化は激しく、また民間団体に求められるものも大きい。さらに遠隔地からの支援であれば「風化」のスピードも速く、学生なら次世代への伝達の難しさもある。転機を迎える(しばらくは迎え続ける)のは当然であり、団体としての「課題の設定」が非常に重要になってくる時期だ。むしろそういうものだと思い直し、慌てて生煮えの課題に取り組むよりは被災地のニーズを見つめ直し、ある種のリサーチを続けつつ、団体の課題再定義に正面から取り組むというのも手だろう。現にそういう申請もあり、高い評価を受けた。
 活動の転換期は成熟したNPOでも難しいものだ。迷ったときは原点に返る・当事者に聞く、他の団体に学ぶ、継続自体を目的としない(場合によっては活動の終了も視野に入れる)、などに留意してほしい。

申請案件の中で評価が高かったのは、
 ・ユースの主体性が十分に感じられた計画(大人だけが書いた計画ではない)
 ・地域に入り込んでいる活動。地元の住民や当事者、その団体との関係を築いており、
  地域やニーズが見えていると思われる活動
 ・人をつなぐことや、ユースを始め内部の人材育成
  (≒団体のキャパシティ・ビルディング)を意識的に図ろうとしている団体
 ・被災地の中長期の状況変化を見据え、現場のリアリティを丁寧に捉えようという
  姿勢を感じさせる活動
 ・活動の継続性を意識し、寄付や自主事業収益など自主財源獲得の努力が
  見受けられる団体
などだった。
逆に、もう一段の頑張りを期待したいと思われたのは、上の逆のケースのほか、
 ・着眼はいいが、まだ事業内容の具体化が途上と思われる案件
 ・予算の積算が甘い案件。そこが弱いと活動の具体的イメージが弱いと判断してしまう
 ・活動計画は優れているが、人的体制が薄く、実施や継続に不安が感じられた案件
などであり、特に気になったものとしては、
 ・これは誰のプロジェクトなのだろうと感じられた活動。つまり、外部者や「大人」が
  やりたいプロジェクトになっていないかと心配になった案件
もあった。また、
 ・被災地支援としては間違いなく良い活動だが、「ユースチャレンジ」という
  本プログラムの趣旨が薄い案件
 ・逆に、内容もユースチャレンジの点でも十分良いが、被災地支援の面が希薄な案件
は本プログラムの趣旨から、最終的には高く評価できなかった。

 最後に、本プログラムは人件費を始めとする管理費にも助成している。これは難しいところで、特に若手主体で活動量も大きい団体ではこここそが一番得たい資源だろうし、しかし逆に、管理費部分を助成金に依存しすぎると継続性が心配になる。簡単ではないが、ぜひ「次」への展望を考え出してほしい。基本的には、1)「助成金後」を展望して、寄付や自主事業収益など自主財源開発の努力をすること、2)団体のマネジメント層(リーダー、サブリーダーなど)の人材育成を意識的に図り、団体としてのマネジメント力をつける、といったところだろう。
 被災地では資金面において、厳しい時期に入ろうとしている。本プログラムは今年度を含めあと3年は続く予定だが、その間にぜひ、団体としてのキャパシティ・ビルディング(基盤強化)を図ってほしい。そういう意識が明確な案件には、管理費的な経費でも評価するよう心がけた。

 震災から3年。被災地のニーズは個別化、多様化、長期化し、直後のような「力業」が有効であった時期は終わって地道で息長い取り組みが求められている。他方、被災地内外で風化や忘却が進み、支援活動も難しい時期にさしかかってきている。その困難な状況に、ユースとして、あるいはユースの活動を応援する者として、どう取り組めばいいだろうか。
 その問いに正解はありませんが、目の前の状況に対して真摯に取り組むこと自体が皆さんの活動と被災地の明日につながると、ともに信じてゆきたいと思います。




2014年選考委員会

 
選考委員長
 実吉 威 認定特定非営利活動法人市民活動センター神戸 理事・事務局長

選考委員(五十音順、敬称略)
 赤澤 清孝  特定非営利活動法人ユースビジョン 代表
 岩附 由香  認定特定非営利活動法人ACE 代表
 鹿住 貴之  認定特定非営利活動法人JUON(樹恩)NETWORK 理事・事務局長
 仁平 典宏 法政大学 社会学部 准教授
 奥谷 直也 住友商事株式会社 環境・CSR部 部長


  




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