活動の持続と「わがこと感」を

選考委員長 実吉 威


 東日本大震災から4年が経った。被災地では災害公営住宅への入居が本格的に始まり、支援のあり方も変化を求められている。一方で、阪神・淡路大震災では5年で解消した仮設住宅での生活も、東日本では丸4年を超えてかなり長期化していくことが見込まれる。課題の拡散、潜在化、個別化、複合化が並行して進んでいる。複雑化する被災地の状況に対して、本プログラムで支援しているユースの活動も、それぞれに多様な試みの中から「次のステージ」を模索しようとしているように感じる。

 まず全体の応募状況を振り返りたい。応募件数だが、今回、Aコースは微減だったが(48件→46件)Bコース(新規)で大きく申請数が減った(53件→33件)。これをどう解釈すべきかは難しいが、長期化の中で被災地および支援者の「体力」が落ちている可能性があり、今後が懸念される。応募団体の所在地を見ても、Aコースでは関東が約半数というのは変わらないが、現地東北勢が3分の1強から4分の1弱(23.9%)に減っている。さらに新しい団体の減少も、昨年度と比べて顕著だった。「設立1年未満」の団体が、Aコースで昨年10件(20.8%)から5件(10.9%)、Bコースで2件(3.8%)から0件と、減少している。Bコースでは任意団体が大きく減り、NPO法人が増えているのは自然な流れだろう。
 採択団体の中で見ると、Aコースでは初採択の団体が30件中9件と約3分の1を占め、しかもその中では、設立後2年以下という新しい団体が7団体あったのは心強い。一方、Bコースでは、被災地の団体が採択11件中4件とほぼ3分の1しかなく、15件中9件を占めた昨年に比べて大きく減っている。ここからも被地の体力低下が心配される。

 次に応募案件の分野だが、前回同様、今回も変化が見られる。具体的には、
 (Aコース)
   コミュニティ形成   12件(21.8%) ← 14件(26.4%) ← 4件(11.4%)
   情報発信 ▲       10件(18.2%) ← 9件(17.0%) ← 4件(11.4%)
   こども支援       9件(16.4%) ← 13件(24.5%) ← 5件(14.3%)
   ボランティア派遣 ◎  6件(10.9%) ← 4件(7.5%) ← 9件(25.7%)
 (Bコース新規助成)
   ボランティア派遣 ◎  8件(20.0%) ← 6件(10.3%) ← 9件(20.5%)
   こども支援       6件(15.0%) ← 8件(13.8%) ← 4件(9.1%)
   ユースの育成      6件(15.0%) ← 4件(6.9%)
   情報発信 ▲      5件(12.5%) ← 13件(22.4%) ← 4件(9.1%)
   まちづくり ▲     4件(10.0%) ← 11件(19.0%) ← 6件(13.6%)
(中央が昨年度、右側が一昨年度。◎は昨年度比30%以上の増加、▲は30%以上の減少)

となり、「ボランティア派遣」がA、Bともに再び増えてきた。一方、「情報発信」が大きく減り、「コミュニティ形成」や「まちづくり」も減っている。遠隔地から被災地に関わるユースのためにはボランティア派遣は欠かせないが、一つのまちの中長期的な復興支援に腰を落ち着けて関わるコミュニティ形成やまちづくりの分野が減ってきたのも気にかかる。被災地からの情報発信についても同様だ。

 申請の内容だが、Bコースの申請件数減にも関係している気がするが、各団体のキャパシティ・ビルディングが問われてきていると感じた。簡単に言えば「体力向上」だ。現場に根ざし、着眼点のよい優れた活動の提案であっても、それを実施する団体の組織的体力が十分でないと思われる案件が散見された。また、申請しながら辞退されたケース、Bコース(継続助成)で1年目の活動が思うようには進められなかったケースもあった。現在の被災地での活動で、「体力」が十分でないのはある意味当然のことだが、支援のニーズがあるのであれば、うまく組織を成長・発展させて持続的な活動に高めていっていただきたいし、本助成プログラムもそのために大いに活用してほしい。
 全体に、人件費の比率の高い申請も少なくなく、また法人全体としても助成金の比率が高い団体も少なくなかった。人件費はその多くが活動に必要な費用と思われたため、根拠の弱い少数のものを除いて積極的に採択した。後者もいますぐに助成金比率を下げるというのも現実的ではないが、中長期的には、寄付・会費収入や自主事業収益など自主財源開発の努力を通じて、その方向を目指してほしい。

 どのような案件を高く、あるいは低く評価したかは、昨年の講評に詳しく書いたので参照していただきたいが、選考において、下記の項目が高く評価されたことは再度強調しておきたい。

 ・ユースの主体性
 ・地域に入り込み、ニーズとその変化をしっかりと捉え、住民や当事者との関係を築いている活動
 ・内部の人材育成(団体のキャパシティ・ビルディング)を意識的に図ろうとしている団体
 ・活動の継続性を意識し、寄付や自主事業収益など自主財源獲得の努力が見受けられる団体

 被災地においては、長期化とともにニーズが潜在化し、ますます個別化してきている。じっくり関わらないと本当のニーズが見えてこないことも多いだろう。例えば「居場所づくり」的な活動の場合、その場所に来られない人をどうするかという視点と、それを乗り越える試みが求められる。外部から被災地域に関わっている場合は、地域により深く根ざし地元の人々との連携・信頼関係を深めること、地元からの参加者をいっそう募ることが求められる。被災地外はもちろん被災地内でも関心の低下があって容易なことではないが、ぜひそこをチャレンジしてほしい。ユースをはじめ市民の参加が増えることは、マンパワーが増え課題解決力が増すだけでなく、多くの市民にこの状況が人ごとではなく「わがこと」と感じてもらう一番の機会を提供することだ。被災地や避難先での支援ニーズは形を変えながらも長く続いていく。活動の継続自体に困難を感じることもあるかも知れないが、そんな時こそ、より多くの人を巻き込み、「当事者」にしていく努力を期待したい。




2015年選考委員会

 
選考委員長
 実吉 威 認定特定非営利活動法人市民活動センター神戸 理事・事務局長

選考委員(五十音順、敬称略)
 赤澤 清孝  特定非営利活動法人ユースビジョン 代表
 岩附 由香  認定特定非営利活動法人ACE 代表
 鹿住 貴之  認定特定非営利活動法人JUON(樹恩)NETWORK 理事・事務局長
 西山 志保 立教大学社会学部 教授
 仁平 典宏 東京大学大学院教育学研究科 准教授
 奥谷 直也 住友商事株式会社 環境・CSR部長


  




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