“関わりにくさ”を乗り越えて

選考委員長 実吉 威


 東日本大震災から2016年3月で5年が経った。1995年の阪神・淡路大震災では被災から丸5年の2000年1月に仮設住宅が解消されたが、東日本の被災地ではまだまだその歩みは遅い。ちょうど本稿を執筆している3月7日の新聞に「仮設住宅解消、最短で2021年」という記事が載った。被災から10年。仮設住宅という仮の住まいに10年というのは想像を絶する。高齢者をはじめ、心身への影響が避けられず、震災から6年目に入ってもコミュニティづくりを始めとする社会のサポートはますます必要とされていくのは間違いない。東京電力福島第一原子力発電所の事故も終息したとは言えず、福島県の公表資料では、福島県だけでも10万人近くの人が県内外でいまだ避難生活を送っている現状がある。
 本プログラムも5年目となり、これまでにもユースの皆さんは多くの成果を挙げてきたが、被災地の実状、被災者のニーズはまだまだ厳しい状況が続く。皆さんの活躍を期待したい。

 今回も全体の応募状況を振り返りたい。まず応募件数だが、今回、Aコース(46件→28件)、Bコース新規(33件→22件)と、いずれも大きく減った。経年変化を見ても、

  2012年 2013年 2014年 2015年 2016年
Aコース 37件 29件 48件 46件 28件
Bコース(新規助成) 54件 42件 53件 33件 22件

と、いずれも2014年頃をピークに明らかに減少している。ニーズがなくなった訳では決してないはずだが、応募数の減少は、被災地・被災者の状況が長期化するにつれてニーズも潜在化、個別化してユースが関わりにくくなった面はあるのかもしれない。

 応募団体の所在地を見ると、Aコースでは現地団体の割合が増え(昨年23.9%(11件)→今年35.7%(10件))、Bコースでは逆にその割合が減っている(39.4%(13件)→31.8%(7件))。Aコースは実数は微減なので、東北以外の団体が大きく減っていることになる(35団体→18団体)。遠方から被災地に関わることが何らかの要因で難しくなってきたのだろう。ニーズの個別化・潜在化により関わり自体が難しくなったことに加え、被災地外での関心低下もあるだろう。それをどう乗り越えるか、まずはそれぞれに要因を分析し、乗り越え方を考えてみてほしい。
 Bコースは、現地団体が減少(13件→7件)、東北外の団体も減っている(20件→15件)。Aコース同様、「関わりにくさ」をどう乗り越えるか、その過渡期にユースの活動も立っているのは間違いない。
 採択団体の中で見ると、Aコースでは初採択の団体が18件中7件と約4割を占めた(去年も9件/30件と約3分の1)。Bコースでも6件中3件と半分。このように新規にこのプログラムにチャレンジしてくださる団体が続いているのは心強く、ありがたいと感じる。

 次に応募案件の分野だが、前回同様、今回も変化が見られる。全体が減っているので実数と割合の両方で見なければならず解釈は難しいが、いくつかの特徴を挙げる。
 Bコースでは、昨年増えた「ボランティア派遣」が、特に減った(20.0%(8件)→0%(0件))。遠隔地からのボランティア派遣という形態では、関わりが作りにくくなってきていることを示している可能性が高いと思われる。一方で、「コミュニティ形成」(5.0%(2件)→14.9%(4件))や「まちづくり」(10.0%(4件)→18.5%(5件))は、実数はほぼ去年並みだが、割合は増えている。昨年は一昨年に比べ減少していたのを心配していたが、再び増えた。ボランティア派遣と好対照といえる。
 両コースともに、「こども支援」という具体的なテーマに関わる活動が実数も割合も減っているのはどう見るか(Aコース18.2%(10件)→16.3%(6件)/Bコース15.0%(6件)→4.2%(1件))。ニーズは間違いなくあるし、本プログラムでも素晴らしい活動をいくつも応援させていただいてきたが、被災地全体で見ると支援力が下がっている可能性があり、心配だ。
 Aコースでは、「スタディツアー」の増加が目立っている(5.5%(3件)→13.5%(5件))。新しい動きであり注目したい。

 今年度の選考を振り返ると、各応募案件について、以下のような視点からの議論がなされた。

1)遠隔地からの支援は、現地でパートナーとなる団体と関係をしっかり作り、現地のニーズ変化にも柔軟に対応している案件は評価が高かった。特にBコースではそこは高く問われた。逆に、そこが弱いと見られた案件は評価が低くなった。現地の大学サークルなどによる仮設住宅支援も同様で、仮設住宅の自治会などときちんと関係作りができているかが問われた。
2)産業の支援(漁業、林業、農業など)は、ユースの活動としては難しいという意見もあったが、生産者との関係をしっかり作り、その事業改善に有効と見られる案件は採択した。また、「産業復興支援」と大きく構えると無理だが、関わる人の増加とコミュニティの活性化と捉え直して採択した案件もあった。
3)ユースの参加度(人数、企画そのものへの関与)や主体性(企画自体のオーナーシップ)も、従来通り問われた。企画は立派でも、書き手にユースの姿が感じられない案件は評価が低かった。
4)コミュニティの存続そのものが困難な地域への支援については、意見が分かれた。無理があるのではという意見もあったが、そもそも本プログラムの趣旨として、ユースが困難な課題にチャレンジすることを応援するということがあり、最後は実現性とのバランスで判断した。
5)全体的に、支援するニーズは何なのか、誰のどういう状態をどう改善したいのかが明確な案件は、活動の意義も理解しやすく、評価が高かった。そこが不明確な案件は評価が難しかった。

 さて、本助成プログラムも5年目となり、このように応募の状況も年々大きく変わってきている。当初から言っている「被災地は変化が激しい」ということの表れがここにも見える。特に、遠方からの関わり、ユースによる関わりがどのように持続的に、被災者のニーズに寄り添って、地域コミュニティとともに、あり得るのか。時を経るに従って関わりにくくなるのは事実だが、その「関わりにくさ」を乗り越える工夫や努力がいっそう求められてきていると感じる。こういう時こそ、他地域の活動や他分野の先進事例などに学ぶ努力を意識的に行ってみてほしい。経験的には、目の前の当事者に即した支援をしようとする人ほど、ネットワークを拡げたり組織運営・経営の知識を体系的に学んだりといったことが後回しになりがちだ(例外もある)。しかし、活動の持続には学習と成長は欠かせない。ヒントはあちこちにころがっているものだ。ネットや書物もいいが、「いい事例」や「真似できるノウハウ」は人とのつながりから伝わってくることが多い。ネットワークを拡げること、そして組織の運営基盤を徐々に整えていくことにも意識を配ってみてほしい。
 最後に、応募いただいたすべての皆さんの活動の発展をお祈りしたい。




2016年選考委員会

 
選考委員長
 実吉 威 認定特定非営利活動法人市民活動センター神戸 理事・事務局長

選考委員(五十音順、敬称略)
 赤澤 清孝  特定非営利活動法人ユースビジョン 代表
 岩附 由香  認定特定非営利活動法人ACE 代表
 鹿住 貴之  認定特定非営利活動法人JUON(樹恩)NETWORK 理事・事務局長
 西山 志保 立教大学社会学部 教授
 仁平 典宏 東京大学大学院教育学研究科 准教授
 角田 裕一 住友商事株式会社 環境・CSR部長


  




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