助成番号  15-2-1

医療的ケアの必要な子どもたちの可能性は無限大
〜地域啓発に向けた広報ツールの作成と活用(2)〜


団体名 バクバクの会
https://www.bakubaku.org/

助成額 200万円

(団体について)
 バクバクの会(旧 人工呼吸器をつけた子の親の会)は、1989年、長期に渡り人工呼吸器をつけている子どもたちの、安全で快適な入院生活と生きる喜びを願い、淀川キリスト教病院の院内家族の会として発足しました。翌年、呼吸器をつけていてもどんな障害があっても、ひとりの人間ひとりの子どもとして社会の中で当たり前に生きるためのより良い環境づくりをめざし、全国にネットワークを拡げ、全国組織として活動を開始しました。人工呼吸器をつけた子どもたちは、自らの人生をイキイキと生き、成長し、保育園や学校に通ったり、電車やバスに乗って旅行を楽しんだりと、生活の場や世界をどんどん拡げていきました。私たちは、子どもたちの命と思いに寄り添いながら、時に子どもたちから教えられながら、できないではなく、どうしたらできるかを考えチェレンジしながら、共に歩んできました。
 現在、全国に約500 名の会員(正会員・賛助会員・購読会員)がおり、定期総会・講演会の開催、会報「バクバク」および冊子(生活便利帳、防災ハンドブック、退院支援ハンドブック等)の発行、情報収集、情報提供、相談、会員相互の交流・情報交換、医療・保健・福祉・教育の充実をめざして関係機関への働きかけ、人工呼吸器をつけた子ども達への社会的理解をはかる活動、支部活動等、さまざまな活動を行っています。

(助成による活動と成果)
 昨年、バクバクの会では、助成を受け、子ども達への社会的理解をはかる活動の一環として、啓発DVD「風よ吹け!未来はここに!!」を作成しました。人工呼吸器をつけていても、地域の学校に親の付き添いなく通学し、たくさんの支援を受けながら豊かに地域生活を送っている事例を紹介することで、人工呼吸器を使用していてもひとりの子どもとして、お互いに支え合いながら一緒に地域生活が送れるよう、地域支援の充実の必要性を啓発するとともに、支援を躊躇している人々が一歩を踏み出せる一助になることを目的とした内容となっています。
 助成2年目の今回は、作成したDVDを活用し、各地域で啓発を行うとともに多くの市民に認知され、各地域での様々な方々と連携でき、つながりが深まるよう全国5都市(広島・大阪・東京・滋賀・愛知)で上映会を開催しました。いずれの会場も、現地の会員を中心に実行委員会を立ち上げ、支援者等の協力を得ながら運営を行いました。また、上映会ではDVD上映とともに、その地域で生活している当事者・家族と外部講師による講演会やシンポジウム、そして地域での取り組みを広げていくための意見交換の場を設けました。上映会の他にも、DVDを紹介したパンフレットの作成も行っています。
 DVD上映会では、東京会場では若干空席がありましたが他会場ではすべて満席となり、全国5カ所で合計1,032名の参加者数となりました。また、参加者の職種等は、当事者や当事者家族を始め、保育・教育・保健・福祉・医療関係者、行政、学生、そしてチラシや新聞記事を見たという一般市民の方など、様々な人が集まりました。参加者からはおおむね高評価を得られ、「このような会を今後もして欲しい」「どんな障害があっても共に地域で生きることの大切さを知ることができて良かった」「(人工呼吸器をつけているから)できないではなく、どうしたらできるかを、共に考え実践していきたい」等の感想をいただきました。更に、上映会では、当事者、家族、教育・福祉・保健・医療等の支援者が繋がる場ともなりました。上映会当日の会場では、当事者・家族同士や、福祉相談員と訪問看護師等支援者同士の繋がりができた事例もありました。各地域における人工呼吸器をつけた子どもや人たちの地域生活への理解が広げられることとなりました。
 また、上映会開催に向けての過程において、現地の会員がそれぞれ連絡を取り合い、支援者等の協力を得ながら活動することで、バクバクの会の支部活動の活性化にも繋がっています。実行委員会には参加できなくても当日は参加した会員の方も多く、日頃なかなか会うことが少ない会員同士が一堂に集まり顔を合わせ、DVD出演者など率先して地域生活を送っている会員と会話や情報交換ができたことは、会員それぞれの地域生活や会の活動へのモチベーションアップに繋がりました。

(残された課題、新たな課題)
 今後も、上映会を未開催の他支部、他地域で、順次開催していきます。しかし、今回上映会を開催した5カ所の地域はDVD出演者や比較的活動的な会員が在住している地域でしたが、これから開催する地域での運営、しいては支部の活性化等については不透明なところが大きく、今後の課題となっています。そのためにも、これまでの上映会での実践事例をまとめ活用できるようにし、また上映会も規模を小さくし運営しやすくし、参加者同士が繋がれるような懇親会を設けていきたいと思っています。
 また、すでに上映会を開催した地域における今後の活動をどう展開していくのか、さらには上映会を通じて広がった当事者や家族と支援者との繋がりがどう具体的な支援の形になっていくのか等の課題もあります。

(活動の背景・社会的課題)(団体からのメッセージ)
 在宅医療や福祉制度が進み、人工呼吸器をつけた子どもたちの支援体制も充実してきたかのようにみえますが、地域によっては、いまだ人工呼吸器をつけていることを理由に、あるいは、小さい子どもは親が看るべきものとの理由で、サービスの利用を断られたり、サービス支給時間が著しく制限されたりするなど、子どもの生活の幅を広げるどころか、家族だけでぎりぎりの状態の介護を続けざるを得ない状況もまだまだあります。保育・教育の面でも、一部の地域では、親の付き添いなく通えている事例があるものの、多くの場合、地域の学校も特別支援学校でも、人工呼吸器をつけている場合は、親の付き添いを余儀なくされている現状があります。また、人工呼吸器をつけていることで、地域の学校への就学そのものを拒否されることも少なくない現状です。
 医療的ケアを提供してもらえず、親が、居宅介護においても子どもの側から片時も離れられず、学校や保育所にも常に付き添いをしなければならないということは、24時間介護となり、親は疲弊し、その結果、子どもの生活の幅が狭められ、自立や社会参加を阻害されるのはもちろん、家族の生活も健康も奪われ、夜間の異変に気づかないなど、子どもの安全をも脅かされることになります。やがて、親は子どもの将来の地域生活に展望が見いだせなくなり、子どもの思いに関わらず、最終的には施設入所を選択せざるを得ないという状況に陥ることになります。このような悪循環の現状をもって、「家族介護が大変」「そこまでして生きていて本人は幸せなのか」という当事者不在の論理の下、気管切開や人工呼吸器装着の見送りが語られ、呼吸器外しを可能にしようという動きがみられ、子どもたちの生きる権利が軽視されるような風潮が加速する懸念さえあります。
 一方で、人工呼吸器をつけた子どもや人たちをとりまく制度には、進展も見られるようにもなっています。2014年1月20日、日本政府は、障害者の差別禁止や社会参加を促す国連の障害者権利条約を批准しました。批准に向けた国内法整備の最終仕上げとして2013年6月に成立、2016年に施行された障害者差別解消法では、「合理的配慮」(障害者一人一人の必要性やその場の状況に応じた変更や調整)を提供しないことは「差別」とされるようになりました。また、人工呼吸器をつけた子どもの地域生活支援については、厚生労働省が2017年3月に、人工呼吸器をつけた子を含む医療的ケアを必要とする障害児の地域生活支援体制の整備の必要性を、法律(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律)に明記する案を公表しました。また教育の分野では、文部科学省が学校における医療的ケアを必要とする子どもたちの親の付き添い状況について実態調査を行い人工呼吸器使用児の比率が高いことを把握し、2017年度から「学校における医療的ケア実施体制構築事業」を開始し、人工呼吸器をつけた子が通学できていないまたは通学に親の付き添いを必要とする地域において、親の付き添いなしで通学できるような支援体制構築のためのモデル事業を開始したところです。
 バクバクの会では、会の結成時から、人工呼吸器をつけている子どもたちが「ひとりの子ども、ひとりの人間」として、地域の中で当たり前に自立していけるよう活動してきました。ドキュメンタリーDVD「風よ ふけ!未来はここに!!」の作成および上映会もその一環であり、どの地域に住んでもいても、人工呼吸器をつけていても、子どもたちが地域の中で必要かつ適切な支援を受けながら、一人の人間として成長し自立していけるような社会の構築に繋げていきたいと思っています。



 
助成番号  15-1-1

長期的に医療的ケアの必要な子どもたちと家族の在宅生活を支える人材育成プロジェクト


団体名 認定特定非営利活動法人 NEXTEP
http://nextep-k.com

助成額 46万円

(団体について)
 認定NPO法人NEXTEP(熊本県合志市)は、「笑顔あふれる地域社会づくり」を目指し、「講演会等を通じた社会課題解決の為のネットワークづくり」「不登校児のサポート」や、「重い障害や難病の子どもたちの在宅生活支援」を事業として展開しています。

「子どもたちが家で、家族と一緒に暮らす」
 当たり前と思われる「家族と一緒に暮らすこと」。このことすら難しいと言われる重い障害や医療機器に囲まれた子どもたち。子どもたち自身、そして看護と介護と育児をいきなり突きつけられる両親も含め、私たちNEXTEPは直接的な医療職や福祉職による支援を行う一方、一般企業や地域住民に向け、「長期に医療的ケアの必要な子どもたちが私たちの街にいて、手を差し伸べる人たちを待っています。」と発信し、支援者を増やしていくことにも取り組んでいます。

(助成による活動と成果)
 今回の助成プロジェクト(以下:本助成)で取り組むのは、「職種も年齢も問わず、長期に医療的ケアの必要な子どもたちの子育てサポーターを1人でも多く作ること」を目指して、学生のインターン研修や見学を受け入れ、将来的に地域で彼らを支えることのできる若手人材を育成する研修プログラムです。

・プログラム
研修の実施場所は、障害児通所支援事業所ボンボン。主な参加対象は、熊本の大学や専門学校に通う学生で、ネクステップの学生ボランティアチームである「ドリカムキッズ」のメンバー中心に募集活動を行いました。1日のみで実施する「見学研修」と、3日以上継続的に参加してもらう「インターン研修」の2種類の研修を、夏休み等の長期休暇に合わせて実施しました。
プログラムとしては、まず参加者に座学による事前研修を実施。「障害をどう考えるか」「社会的背景」「NEXTEPの取り組み内容」といった内容を学習した上で、実際の現場に入ってもらいました。さらに現場においても、「安全面への配慮」といった基本的な知識や、「子どもたちの個性に合わせての関わり」など、参加学生が学びを深められるよう必要な指導をしながら、一緒に活動しました。

・成果 〜参加学生の変化について〜
 本助成期間では、計17名の学生に、のべ345時間の研修を行うことができました。特に、継続的な参加をしてくれたインターン研修生のみなさんが、日々新たな気づきや発見を得て、学びを深めていく姿は印象的でした。また、参加学生へのアンケート及びヒアリングから、下記のような変化・成長が見られました。
(1)重い障害をもつ子どもたちへの印象の変化(参加学生全般)
 子どもたちの現場が明るく、楽しいものであることを実感を持って理解。重い障害をもつ子どもたちとの関わりを、前向きな印象として捉え直す機会となた。特に、学生と子どもの間に個人の人間関係が生まれており、このことは参加学生が生涯にわって障害のある方とどう接するかについて良い影響を与えます。
(2)子どもたちとの関わりに必要な要素の理解(インターン研修参加学生)
 「信頼関係」「個性に合わせた関わり」「安全面への配慮」「多職種の連携」などへの理解が深まったと考えられます。
(3)子どもたちに関わる仕事に進むきっかけとなる経験に(一部インターン研修参加学生)
 医学部に通う学生から小児科医を目指すことを決めたとの声がありました。

(残された課題、新たな課題)
 今回のインターン研修に参加した学生が在籍している学校が、熊本大学、熊本保健科学大学の2校に偏っていました。幅広い大学や専門学校からの参加があるよう、働きかけを工夫していくことが必要です。
 また、今回参加した学生もいずれ卒業し、OB、OGとしてのネットワークが形成されていきます。長期的にOB、OGとの交流の機会を持ち、このネットワークが可能な限り生かされるよう環境づくりを行うことは新たな課題と考えます。

(活動の背景・社会的課題)(団体からのメッセージ)
 長期に医療的ケアの必要な子どもたちの育児には、医師や看護師、福祉職といった、専門職による支えだけでなく、必ず地域住民や行政、企業等の協力と支えが必要です。
 長期に医療的ケアの必要な子どもたちの存在をみんなが知っていて、気に掛け、たくさんの人の関わりの中でその子を中心として環境を改善していく。そんな形で、弱い立場にある人を大切にしていく過程は、自然と関わる人の心を温かくしていく事にも繋がります。そしてそれは、地域に暮らすみんなにとって暮らしやすい社会を作っていくことと、イコールではないかと思います。
 笑顔溢れる地域社会づくりに貢献できるよう、これからも継続的に取り組みを続けていきたいと考えています。



 
助成番号  15-1-2

ニコゼミ2016 重い病気や障がいのある子どもに関わる人材育成のためのコミュニケーション講座の実施


団体名 認定特定非営利活動法人 ニコちゃんの会
http://www.nicochan.jp/

助成額 193万円

(団体について)
 当団体は、どんなに重い病気や障がいがあっても「その人らしい心豊かな人生を生き抜く」ことができる社会を目指し活動しています。 芸術・研究・啓発・介護(日々の生活のサポート)など多岐にわたる活動を、障がい児の親をはじめとし、医療・デザイン・舞台・教育など幅広い分野のスタッフで企画・運営しています。

(助成による活動と成果)
 本プロジェクトは、重い病気や障がいのある子どもと社会をつなぎ、医療福祉に関わる新たな人材を発掘・育成する取り組みです。重い障がいのある子どもと関わる機会の少ない人を対象に、見学1回、演習6回、実践4回のコミュニケーション講座「ニコゼミ2016 最小で最大のコミュニケーションに出逢う!!!」を開催してきました。さらに、その集大成、追体験の場として、一般に向けてこの取り組みをアピールし新たな関わりを見出すイベント「あそぱく―ニコゼミあそび博覧会―」も受講生とともに創り上げ開催しました。
 「ニコゼミ」の実践の中で重い障がいのある子どもと遊び、そこでの気付きや揺らぎをあそびを通して他者に伝える場「あそぱく」を経たことで、受講生にとって障がいのある人と関わるうえで『○○をしてあげる』ではなく『○○を一緒にする、そのために手伝うこともある』という姿勢を身体で理解できていたと実感しています。それは「障がい者」と「健常者」だった人たちが「あなた」と「わたし」の関係になり、それによってはじめてコミュニケーションが始まる大切な取り組みでした。1年間をかけて、じっくりとこのことを伝え、感じ取ってもらえたことは、技術や知識を得る以上の大きな成果であったと言えます。
 さらに、「ニコゼミ」を通して知り合った障がいのある子どもと受講生の今後の繋がりも期待できたり、「あそぱく」によって視線入力など新たなコミュニケーションの方法に出逢えた子どももいたりと、そこここにこのプロジェクトだけでは終わらない次の展開が多く見込まれる活動となりました。

(残された課題、新たな課題)
 少しでも多くの人に、また医療福祉にかかわっていない人にも、参加して出逢ってほしいとの思いから、応募枠をほとんど制限なく詳細(職業や受講理由など)も聞かずに受け入れを行ったところ、当事者や医療福祉関係者からの応募も多数ありました。障がいのある本人や障がいのある人と仕事として関わっている人と普段関わっていない人が一緒に講座に参加することでみえてくるものもあれば、同時にやはり齟齬もうまれました。また無料で気軽に参加できる単発参加も募集していたが故に、当日キャンセルや連絡がつかないなどが多くあり、運営面としても常識的にも疑問が生じる場面がありました。しかし間口を狭くすることで、限られた人しか関わることができないというのでは本末転倒です。今後どこまで詳細を聞くか、分けて募集するかどうか等、じっくりと検討する必要があると感じています。

(活動の背景・社会的課題)(団体からのメッセージ)
 重い病気や障がいのある子どもの現状というのは、家族・特別支援学校の教師・医療・福祉関係者が多くを占めます。医療的ケアが必要になればなるほど、外出は困難になり、学校も通学ではなく教師が自宅に来る訪問学級になります。なかなか同年代の子どもとあそぶ機会は少なく、大人との接し方にしても、医療・福祉関係者とは生命や生活に必要なケアが中心で、深いコミュニケーションの時間はなかなか設けられません。
 子どもは親や教師、まわりの大人によって様々な教育を受けたり常識を教わったりしますが、それと同時に他者と対等に接する中で、知恵や創造性、空気を読む力、他者を大切に思う心など、多くのことを学び成長していきます。そのような年齢に応じた人間関係を築きながら成長していくことが彼らには難しい状況にあります。
 それから、彼らは身体的表現はもとより発語や表情にいたるまで非常に限られた動きでしか発信することができないため、発信がないものと捉えられていたり、感情や人としての尊厳を軽んじられることも、珍しいことではありません。彼らを取り巻く医療・福祉の現場でさえ善悪問わずそのようなことは日常的に起こっています。さらに普段から彼らと接することのない人が出会うとすればなおさらそうなることは必至です。
 しかしながら、彼らは手術や医療的ケアによる身体的なストレスや、コミュニケーションの取りづらさ・制限のある生活による精神的な負荷を日常的に経験していることもあり、年齢以上の精神力を持っていることは少なくありません。さらに、指のかすかな動きや眼球の動きなど、最小の動きで最大限に人にメッセージを伝えることができます。受け手がそれに気づきしっかりと受け止めるスキルやきっかけさえあれば、彼らは人にメッセージの内容以上の大きな感動や喜びを与えてくれます。それは人と通じ合うことができるという人間本来の持つ欲求が付加価値となって、人に大きな気づきをもたらしてくれるのです。そのような彼らの最小で最大限の発信に気付き、また引き出し関わることのできる人材が、今後もっともっと必要になってきます。
 医療の発展した現代、重い病気や障がいのある子どもが他者と対等に接し学びを得る機会と、彼らの発信に気づき関わることのできる人材の育成のふたつが、彼ら自身の人間的成長と多様性を認める社会全体の成熟にとって重要な課題であると言えます。



 
助成番号  15-1-3

ホスピタル・プレイによる在宅支援システムの構築


団体名 特定非営利活動法人 ホスピタル・プレイ協会
すべての子どもの遊びと支援を考える会
http://hps-japan.net/

助成額 200万円

(団体について)
 ホスピタル・プレイ・スペシャリスト(HPS) は、遊びの力を用いて、病気の子どもたち、障がいのある子どもたち、そしてきょうだい、家族を支える専門職です。1960年代に英国で誕生したHPSは、日本では2007年から文部科学省の委託を受け静岡県立大学短期大学部で養成教育事業が始まりました。現在では静岡県立大学短期大学部でHPS養成講座とHPS養成週末講座が開講されています(文部科学省 職業実践力育成プログラムおよび厚生労働省 教育給付金制度に認定)。2016年度末現在、161名の日本生まれのHPSが誕生しています。
 私たちHPSは、医療的ケアを必要とする子どもたちすべての命の輝きと可能性を外に向かって発信できるよう、遊びを用いて支援を行います。言葉を持たない子どもも、どこか体が不自由な子どもも、常に医療機器を必要とする子どもも、限られた命の子どもも、劣悪な環境の中で育った子どもも、みんな同じ子どもであり、すべての子どもがそうであるように、遊びを通して学び、成長し、個性を形成し、生きる喜びを覚えます。
 すべての子どもが、遊びという必要不可欠な活動にアクセスできるよう、これからも小児医療、児童福祉にかかわるみなさんや地域のみなさんと共に取り組んでいきたいと考えています。

(助成による活動と成果)
 今回の助成では、医療的ケアや介護ではなく、在宅の医療的ケア児に遊びを届ける支援を通して、子どもの遊ぶ権利を保障するとともに、家族に病児としてのわが子ではなく、子どもとしてのわが子に出会ってもらうため、ホスピタル・プレイによる在宅支援システムの構築を目指すことを目的として、(1)助成事業遂行のためのワーキングチームを立ち上げ、(2)HPS 7名による12名の子どもを対象にしたホスピタル・プレイの実施、(3)英国から在宅支援を行うHPSをシンポジウム講師兼在宅支援スーパーバイザーとして招へい、(4)日本での在宅支援の現状と子どもや家族のニーズ調査、(5)英国における在宅支援の先進事例の調査に取り組みました。
 成果としては次のことが挙げられます。
 (1)ではワーキングメンバーによる会議を計5回開催し、活発な意見交換ができました。会議やメーリングリストでのやりとりからもメンバー間の協力が図られ、各メンバーの責任のもと役割を遂行することができました。その結果、子どもに関する情報の共有や在宅におけるホスピタル・プレイの必要性に対する認識を深めることができました。(2)ではホスピタル・プレイを在宅支援に届ける取り組みにおいては、これまで考えもしなかった遊び方や遊びが子どもに届けられ、子どもの成長を促すだけではなく、家族は新たな子どもの側面を発見することができました。在宅支援にかかわるHPSに求められる知識や技術に対する理解も深まったので、その成果を在宅医療にかかわるその他の専門職と共有し、チームとしての働きかけの向上を図りたいと思います。(3)では英国から在宅支援を行うHPSを招へいし、開催したシンポジウムでは医師、看護師、理学療法士、作業療法士など多職種による68名の参加がありました。在宅支援のスーパーバイズも受け、HPSのスキル向上はもちろんのこと、日本で生活する医療的ケア児の自宅に英国HPSが訪問し、今でもメールなどでつながりを継続して持っていることは、子どもにとって大きな励みになっているようです。(4)では国内調査を通して長期に入院生活を送っていた子どもと家族に退院時の在宅支援の移行への支援がなく、社会資源も不足していること、日々の医療的ケアや介護による家族の抱える精神的・肉体的負担の大きさなど、子どもと家族のニーズを把握しました。(5)では英国で在宅支援を専門に行なうプレイ・スペシャリストに同行し、HPSの役割を学び、在宅支援に活かすことにつながりました。
(英国研修報告:http://hps.sub.jp/2016/eikokukensyu.pdf

(残された課題、新たな課題)
 1年間の助成事業を振り返り、HPS による在宅支援は「子どもが親と出会い、親が子どもと出会うための支援」であったように感じています。つまり、これまでの親子関係を構築する際に、医療が子どもの“生”の中心にあったため、医療的ケアの部分にばかり親は目を奪われてしまい、子どもとしての可能性やニーズを発見できずにいるのです。ホスピタル・プレイを介在させることにより、子どもたちは生き生きと自己表現を始め、家族は子どもとしてのわが子に出会えたのです。さらに多くの子どもと家族にホスピタル・プレイを届けるために、なお一層の臨床的な研究が必要であると感じています。HPSによる在宅支援を継続し、就学前から思春期の子どもまでの支援を行い、病気や障がいがあっても、1人の子どもとして持っている可能性を社会に向けて発信していきます。そのために、より子どものニーズに合ったリハビリや治療への橋渡しとなる在宅支援システムの目的及び方法を模索していきます。

(活動の背景・社会的課題)(団体からのメッセージ)
 高度な医療的ケアを必要とする子どもたちが、医療政策の変更により入院から在宅へと移行されています。在宅で過ごす子どもと親にとって医療的ケアや介護が必要であることはいうまでもありません。しかし、医療的ケア児の子どもとしての部分にしっかりと焦点が当たった支援も必要であるという認識が、まだまだ日本では不足しているように感じます。ホスピタル・プレイを通して医療的ケア児の可能性をどんどんと外に向けて発信し、家族が子どもとしてのわが子を理解できるように支援することによって、結果的によりよい家族関係が構築できるのではないでしょうか。医療的ケア児に遊びを届けるために、HPSの養成もさらに必要となります。在宅における医療的ケア児にホスピタル・プレイを届け、その成果をもって医療的ケアによって守られる生と、遊びによって輝きを放つ生の両方を守る支援が大事だということを、広く社会に伝えていきたいと考えています。








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