助成番号  16-2-1

ホスピタル・プレイによる在宅支援システムの構築(2)


団体名 特定非営利活動法人 ホスピタル・プレイ協会
すべての子どもの遊びと支援を考える会
http://hps-japan.net/

所在地 静岡県
助成額 200万円

(団体について)
 ホスピタル・プレイ・スペシャリスト(HPS) は、遊びの力を用いて、病気の子どもたち、障がいのある子どもたち、そしてきょうだい、家族を支える専門職です。1960年代に英国で誕生したHPSは、日本では2007年から文部科学省の委託を受け静岡県立大学短期大学部で養成教育事業が始まりました。現在では静岡県立大学短期大学部でHPS養成講座とHPS養成週末講座が開講されています(文部科学省 職業実践力育成プログラムおよび厚生労働省 教育給付金制度に認定)。2017年度末現在、179名の日本生まれのHPSが誕生しています。
 私たちHPSは、医療的ケアを必要とする子どもたちすべての命の輝きと可能性を外に向かって発信できるよう、遊びを用いて支援を行います。言葉を持たない子どもも、どこか体が不自由な子どもも、常に医療機器を必要とする子どもも、限られた命の子どもも、劣悪な環境の中で育った子どもも、みんな同じ子どもであり、すべての子どもがそうであるように、遊びを通して学び、成長し、個性を形成し、生きる喜びを覚えます。
 すべての子どもが、遊びという必要不可欠な活動にアクセスできるよう、これからも小児医療、児童福祉にかかわるみなさんや地域のみなさんと共に取り組んでいきたいと考えています。

(助成による活動と成果)
 2年間の助成では、在宅の医療的ケア児に遊びを届ける支援を通して、子どもの遊ぶ権利を保障するとともに、家族に病児としてのわが子ではなく、子どもとしてのわが子に出会ってもらうことを目的に、ホスピタル・プレイによる在宅支援システムの構築を目指しました。内容は、@HPS7人による在宅で過ごす17人の子どもを対象にしたホスピタル・プレイの実施、A在宅支援を行うHPSをメンバーにしたワーキングチーム委員会の開催、B海外講師をシンポジウム講師兼在宅支援スーパーバイザーとして招へい、C英国における在宅支援の先進事例の調査、の4つに取り組み、それぞれの成果としては次のことが挙げられます。

@在宅で過ごす子どもたちへのホスピタル・プレイにおいては、これまで考えもしなかった遊び方や遊びが子どもに届けられ、子どもの成長を促すだけではなく、家族は新たな子どもの側面を発見することができました。在宅支援にかかわるHPSに求められる知識や技術に対する理解も深まり、HPSによる在宅支援の目標、役割、在宅支援を行うHPSとして必要な知識、技術、能力が明らかになりました。さらに在宅支援を通してHPSが高めたいと思う子どもが健やかに生きるための4つの力(1.子どものつながる力、2.かけがえのない自分を認める力、3.挑戦する勇気の力、4.自分の能力を発揮する力)とその評価指標を開発しました。今後はこれらを用いてさらに検証を行い、在宅医療や特別支援教育にかかわる専門多職種と共有し、チームとしての働きかけの向上を図っていきます。

Aワーキングメンバーによる会議を計5回開催し、活発な意見交換ができました。会議やメーリングリストでのやりとりからもメンバー間の協力が図られ、各メンバーの責任のもと役割を遂行することができました。その結果、子どもに関する情報の共有や在宅におけるホスピタル・プレイの必要性に対する認識を深めることができました。

B英国から感覚(視覚や聴覚など)に障がいを持つ子どもたちや重複障害を持つ子どもたちとの教育的なかかわりについての助言指導、また自閉症スペクトラム、学習障害などの発達障害児、脳性麻痺や進行性の神経難病など多様な医療ニーズを持つ0歳から25歳までの子どもと青年を支援しているElizabeth Lydia氏を招へいしました。開催したシンポジウムでは医師、看護師、理学療法士、作業療法士などの専門多職種のほか、中学生や高校生などホスピタル・プレイに興味や関心のある一般市民も含め、のべ385人の参加がありました。在宅支援のスーパーバイズも受け、HPSのスキルの向上につながりました。

C英国の調査では、在宅を専門に行なうプレイ・スペシャリストに同行し、専門多職種チームにおける役割を学び、在宅支援に活かすことにつながりました。

1年目は子どもときょうだい、家族のつながり、2年目は子どもを取り巻く他機関、地域、社会とのつながりを強化することができました。

(残された課題、新たな課題)
 HPSによる在宅支援の目標、役割、必要な知識、技術、能力が明らかになりました。さらに、在宅支援を通してHPSが高めたいと思う子どもが健やかに生きるための4つの力とその評価指標を開発しました。しかし、この4つの力と評価指標の検証までには至っていません。今後はHPSによる在宅支援の効果を蓄積・測定し、検証した成果を積み重ね、発信していきたいと考えています。
 またHPSによる遊びの在宅支援は、訪問看護や訪問リハビリなどのように医療保険や介護保険などの対象ではありません。今回、訪問した17家族はHPSの在宅支援の継続を希望しています。さらに今はHPSの在宅支援を受けていない子どもや家族の潜在的なニーズもあると考えています。在宅支援を安定かつ継続して行うための財源の確保が早急に取り組むべき課題となっています。当法人としては、必要な財源の確保を図るため、@在宅支援を受ける家庭への一定の負担を求める、A在宅で過ごす医療的ケア児の現状を広く社会に訴え、地域住民から寄附を募る、B居宅訪問型保育事業や訪問介護との連携を構築する、など安定かつ継続してHPSの在宅支援を行う仕組み作りを検討していくことが必要となります。将来的には障害者福祉サービスや医療制度・施策とあわせて、子どもが健やかに生きるための4つの力を育むために、ホスピタル・プレイを用いた在宅支援システムの制度化が望まれます。

(活動の背景・社会的課題)(団体からのメッセージ)
 高度な医療的ケアを必要とする子どもたちが、医療政策の変更により入院から在宅へと移行されています。在宅で過ごす子どもと親にとって、医療的ケアや介護が必要であることはいうまでもありません。しかし、医療的ケア児に焦点を当てた他の支援も必要であるという認識が、まだまだ日本では不足しているように感じます。ホスピタル・プレイの支援を継続することで、家族が子どもとしてのわが子を理解できるようになり、結果的によりよい家族関係が構築できるのではないでしょうか。今後もHPSの養成とスキルの向上を図りながら、在宅の医療的ケア児にホスピタル・プレイを届け、その成果をもって医療的ケアによって守られる生と、遊びによって輝きを放つ生の両方を守る支援が大事だということを、社会に広く伝えていきたいと考えています。

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助成番号  16-1-1

医療的ケアの必要な子どもとその家族の疲弊防止プロジェクト


団体名 特定非営利活動法人 親子はねやすめ
http://haneyasume.org

所在地 東京都
助成額 160万円

(団体について)
 重い病気や障がいのあるお子さんとそのご家族を支援する活動をしています。
 私たちは、ご家族への理解者を増やすとともに、ご家族が社会のつながりを感じて頂き、ご家族の疲弊を防ぎ、「生きる力」を得て頂くために以下の活動を続けております。

【親子レスパイト旅行】
 複数の家族を医療ボランティアと連携して旅行へご案内します。介護は医療ボランティアが、きょうだい児は地元ボランティアをはじめとする学生たちが一緒に遊び、親御さんにはのんびり羽を休めて頂くと同時に、複数の家族をお連れすることで家族間の会話が生まれる場を提供しています。たくさんのかかわりをご家族に感じて頂き、たくさんの笑顔が生まれています。明日への力、生きる勇気を「人」と「人」との中で生み出します。

【きょうだい児キャンプ】
 日頃、親御さんに甘えられず寂しい思いをしているきょうだい児を遊びに連れていきます。遊びからくる経験も少ないきょうだい児たち。農業体験、海水浴、スキー等々みんなで沢山遊びます。「将来は、お医者さんになるんだ!」そんなきょうだい児の声も聞こえています。きょうだい児は、対象となるお子さんの生涯のパートナー、たくましく育ってほしいと願い活動しています。

【演奏会の提供】
 主にクラリネットの演奏会を施設や病院にお届けしています。時に、老人施設へも伺います。
踊りだす子や歌いだす子もいたりと、大賑わいな演奏会です。
 演奏はプロのクラリネット奏者・田中正敏を中心とするメンバーで演奏場所に応じて2名〜5名位の編成で演奏します。曲目はクラシックから子どもたちが喜ぶアニメの曲、また、昔懐かし『男はつらいよ〜寅さん』のテーマソングまでと幅広く、世代を超えて楽しんでいただいております。

【親子はねやすめと同様な活動をして下さる団体の創出】
 一団体でも多く、地域に根差した団体を活動の中(旅行会)で生み出していきたいと願っております。
(実績:長野県 任意団体「ほっとくらぶ」)

【ご家族を理解し受け入れて下さる宿泊場所、地域・団体の募集・創出
 重い病気や障がいのあるお子さんとご家族が揃って出かけることのできる社会になって欲しい。親子レスパイト旅行を通じて、ご家族と受け入れ側、双方の「気づき」が全国いたるところで生まれるように努力しております。

(助成による活動と成果)
 2017年10月6日(金)〜7日(土)仙台市秋保温泉街の某ホテルとその系列ビジネスホテルにて、東京と仙台からご家族をお招きして親子レスパイト旅行を実施しました。
 参加者は計24名(東京のご家族5名、仙台のご家族5名、親子はねやすめスタッフ5名、東京より医療ボランティア3名、仙台より視察医療者2名(日帰り)、仙台ボランティア4名)です。
 その後、報告会を一般にも公開する形で催し、ご家族への理解を求めるとともに、今後の活動のためにボランティア参加者、会員を募集しました。

 ご家族のはねやすめと明日への活力を得て頂けたことはもちろんのこと、ご支援くださった方々からも「こういったご家族の存在を初めて知った」「ボランティア参加のきっかけになった」等のお声を聴くことが出来ました。長野県に続き2か所目の活動拠点を東北・宮城の地に生み出す可能性を大きく得ることができました。また、協力頂きました仙台タウン情報誌“machico”より弊団体初となるアンケートをお取りいただき、多くの方々に理解と共感を賜ることができましたことも、私どもにとって大きな励みであり今後お答えいただきました多くの方々とのコミュニケーション、繋がり、ボランティア参加の糸口となる可能性を頂きました。

(残された課題、新たな課題)
 今回の助成で充分な成果を得たとは言い難く、地元ボランティア、弊団体の会員増強を宮城の地で一人でも多く募ることが必要です。その意味でも、宮城をさらに深く理解する必要性を感じています。

(活動の背景・社会的課題)(団体からのメッセージ)
 日本は、世界的に見ても子どもの命を救える国となっております。しかし一方で、人工呼吸器などの医療機器なしでは生きていけないお子さんもいらっしゃいます。その数は年々増えており、全国で約1万7千人という数字が示されました。今後、救われる命は増加していく見込みで、大変うれしい話なのですが、そのお子さんやご家族をサポートする仕組みや制度が追い付いていないのが現状です。
 命が救われたお子さんの多くは、ご自宅で親御さんの介護を受けながら成長していきます。しかし、ご家族の負担は私たちの想像を超えているケースが多く、特に母親の精神的、肉体的疲労ははかり知れません。痰の吸引等々の医療的ケアの必要なお子さん、特に新生児においては、ほぼ24時間体制で介護していらっしゃいます。また、「死んでしまうかもしれない」と強い緊張感の続く環境下で介護をしています。お子さんを連れて外出など考えることができない、他人の目が気になる、元気に産んであげられなかったことで自身を責める・・・。ほっと一息、ゆっくりと休む時間が必要です。
 また、かかわりの持てる人が一人でも多くご家族のまわりに必要です。ご家族の疲弊を防ぐために。

 ご家族に社会の中の一員であることを気づいてもらいたい。そのためには、医療や福祉、行政に任せきる体質の社会風土ではなく、「人」と「人」が支え合う風土作りが必要です。ささやかながらの活動ですが、その実践を繰り返し行っていくこと、多くのご家族と少しの時間でもかかわることの重要性を感じ活動しています。生業を超えて、「人」と「人」が寄り添う。ゆっくりと休む時間、安心した時の流れ、そして楽しく過ごす時間を人が作り、ともに共有すること。決して特殊な活動ではありません。一緒にご家族と楽しい時間をともにしてみませんか。そこに身を置くことで、ご家族にも、ボランティアに参加された方にも様々な気づきが生まれています。

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助成番号  16-1-2

病弱児と関わる学習支援ボランティア育成プロジェクト


団体名 特定非営利活動法人 ポケットサポート
https://www.pokesapo.com/

所在地 岡山県
助成額 199万円

(団体について)
 私たちNPO法人ポケットサポートは、病弱児(慢性の心臓、肺、腎臓などの疾患で、継続して治療もしくは生活規制の必要な子どもたち)の笑顔を引き出し、将来に希望を持って生活できるように岡山市を拠点に小児科のある岡山県内総合病院の外来や病棟、自宅へ訪問し、交流や学習支援を行っている団体です。 
 特に、小児がんの再発や心臓病、慢性疾患など、長期的な治療を必要とする子どもたちも多く、地元校への復学の不安、体験や経験の不足、友達とのコミュニケーションや体力的な不安を抱える病弱児がいます。また、病弱児の学習を保障するための社会的な教育システムは未だ充足されておらず、保護者からの意見、小児病棟スタッフらからも支援を希望する声は高まっており、ポケットサポートの活動は非常に重要であると考えています。

(助成による活動と成果)
 本助成プログラムの【学習支援ボランティア育成・フォローアップ研修およびリーダー養成】を通じて、支援者の育成プログラムの体制作りが行われました。その中で有識者を交えたワークショップの開催など、病弱児の抱える諸課題を伝え、一緒に活動してくれる仲間を増やし、その質の向上も行うことができました。加えて、リーダー養成カリキュラム策定により、さらに一歩踏み込んだ形で密に関わる支援者を養成する準備を始めることができました。
 また、【医療従事者、教育関係者、地域、行政等に病弱児への理解を啓発】【医療・教育・行政・当事者・家族の交流・連携強化】のプログラムでは、病弱児の教育課題に関する講演会や、シンポジウムを開催することができました。地域の方々や学校関係者、医療関係者など子どもたちに関わる様々な方々に岡山県内外から参加していただくことができ、課題の共有や話し合いをすることができました。さらに関係者の方々と連携することができ、この社会課題解決について共に歩んでいける連携を図ることができたことは本助成プログラムの大きな成果だったと言えます。

(残された課題、新たな課題)
 支援者を増やすことや育成をすることにより、理解者が増え病気の子どもたちが安心して過ごせる地域や社会を作る体制を整えることができました。しかし、さらに制度の面が整わなければ本当の「安心」につながらないのではと考えています。治療の合間でも体調に折り合いをつけて、子どもたちは学ぶ意欲を見せてくれます。支援していた子どもがあるとき、「僕が5時間勉強しても10時間勉強しても出席にも単位にもならんのよな。」と漏らしたことがあります。支援のできる人を増やしていっても解決できない課題です。例えば、我々の運営するスペースに通ったり訪問による支援を受けることで、在籍している学校の出席や単位として認められる等フリースクールや通級指導の場になるなど制度の面も加えていくことで解決できるのではないでしょうか。
 学習支援・復学支援の先にある、就労の壁という課題もあります。病気を抱えていても、社会の一員として働けることの喜びを知ってほしい、そしてそのような子どもたちが安心して働けるような地域や社会を作っていく必要があります。就労支援というのもこの先の課題になると考えています。ポケットサポートでは、病気によりアルバイト経験ができなかった学生の就労体験なども行いながら、就労支援を見据えた取り組みも行っていきたいと考えています。

(活動の背景・社会的課題)(団体からのメッセージ)
 日本では全ての子どもに対し「教育を受ける権利」が保証されており、様々な子どもたちが学び舎で、友だちや先生と一緒に教育を受けています。しかし、病気やけがにより長期欠席(30日以上連続して休んでいる)をしている子どもは、全国で約50,000人以上もいます(「学校基本調査」より)。そして小児がんなどの疾患による治療が必要で、30日以上、病院に入院をしている「長期入院」を強いられている子どもは、全国におよそ6,300人いるというデータが明るみになりました。その中でも継続的に教育を受けられている子どもは、わずかだということも分かりました。
 子どもは入院中、とてもつらい治療と闘いながら、過ごしています。大好きな家族と離ればなれになってベッドに寝ているとき、様々なことを考えます。白い天井を見つめるその視線を横に向けると、点滴に入った薬。病室にいる時には、病気の自分しか想像させてくれません。しかし、算数の問題を解いている時や英語の単語を覚えている時には、そんな「病気の自分」から解放されて「子どもらしい時間」を過ごすことができます。ある小学生の女の子に「辛い治療中なのに、なんで勉強そんなに頑張るの?」と聞いたところ「だって、勉強しとる時は病気のこと忘れられるんやもん。」と答えてくれました。「学ぶことは生きること」なのだと。この言葉を教えてもらった時、心からそう思いました。子どもたちからもらった言葉や、いろんな贈り物は自分たちの活動の糧となっています。
 現在は医療の進歩により救える命が多くなってきました。子どもたちは大人になり「どのようにより良い社会生活が送れるかどうか」ということが課題になってきます。病気を治していくと同時に、退院後の生活を見据えた上で、子どもたちに必要な教育を通じて成長・発達も保障していくということ。本人やご家族、医療者や教育者など、関わる様々な方々と一緒に考えていく必要があると感じました。
 そこで、私たちは2015年11月11日に仲間たちと病気の子どもの学習・復学支援「NPO法人ポケットサポート」を立ち上げました。病気の子どもたちが安心して過ごせる社会を目指すこと、そして彼らが将来に希望を持って生活できるということを実現するために、タケダ・ウェルビーイング・プログラムはじめ、多くの方の協力やご支援の下、活動や取り組みを進めています。病気で入院中であっても、自宅で治療を続けていても、笑顔で将来に希望を持って生きていけるように。「病気の子どもたちが安心して過ごせる、そして教育を受けられる地域や社会」を作っていきたいと願い、活動を続けています。

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助成番号  16-1-3

病気の子どものきょうだい支援を広げるためのシブリングサポーター養成事業


団体名 特定非営利活動法人 しぶたね
http://sibtane.com/

所在地 大阪府
助成額 170万円

(団体について)
 しぶたねは、病気をもつ子どもの「きょうだい」のための団体です。きょうだいが主役になりあそびきるワークショップ「きょうだいの日」や、病院内の活動、小冊子の作成配布、講演や啓発活動などを行っています。
 きょうだいたちは、重い病気をもつ兄弟姉妹との人生の中で、病気についてわからない不安や、周囲の大人の目が自分に向かない寂しさ、プレッシャー、自責感、悲しみ、怒り…いろんな気持ちを抱え、感じながら、大きくなっていきます。子ども時代に抱えた経験、複雑な気持ちは、たとえ兄弟姉妹の病気が治っても、きょうだいが大人になっても、帳消しになるわけではなく、大人になってもしんどい気持ちを抱え続けるきょうだいもたくさんいます。保護者の方々もきょうだいのことを心配しながら、治療やケアに追われてなかなか思うようにきょうだいと過ごせずに悩んでおられたり、ご自身を責めてしまうということが起こっています。そんな保護者の方々の悩みを受け止めておられる支援職の方々からもまた、きょうだいたちに何をしてあげられるだろうと悩んでおられる声を聴いています。きょうだいたちのしんどさを、きょうだいや家族だけで抱えるのではなく、もっと社会のたくさんの人で関わっていけることがあるのではと感じ、活動をひろげてきました。

(助成による活動と成果)
  きょうだいへのサポートの必要性が医療や福祉の場で認識されつつある今、きょうだい支援を担える人が増えなければ実際の支援の増加には結びつかないと考え、きょうだい支援を担える人や、きょうだいたちの応援団になってくれる人(シブリングサポーター)を増やしつながることを目的とした「シブリングサポーター研修ワークショップ」を他府県(愛媛県、岡山県、兵庫県、愛知県、栃木県、東京都、千葉県、秋田県)に広げて10回開催しました。受け入れ先は病院の他、病気の子どもと家族を支援するNPO法人や任意団体、きょうだい支援をすでに行っている団体が手を挙げてくださいました。
 研修ワークショップの内容は、テキストに沿ってきょうだいたちのもちうる気持ちを知り、きょうだいの安心につながる対応のヒントをお伝えする講座と、実際にきょうだいに関わることをイメージできるようなグループワーク、希望により、しぶたねで行っている、小学生きょうだいを対象としたワークショップを実際に大人同士で体験するプログラムで構成されています。
 この1年で239名のシブリングサポーターが誕生し、病気の子どもと家族のためのイベント内で、きょうだいのためのプログラム作りに生かされたり、群馬県に新たなきょうだいのためのグループが立ち上げられたりと、きょうだいを支える輪が広がっています。また、各地で研修ワークショップを開催することで、新たな人や団体とのつながりができ、再び講演に呼んでいただけることも増えました。
 予想していなかったところでは、病院以外の場所で開催したことで、参加を想定していた看護師さんや病院の保育士さんに加え、特別支援学校の先生や、地域の訪問看護、児童デイの職員の方々の参加が多くあり、地域で暮らすきょうだいへの優しく熱い思いにふれられたことも大きな発見でした。

 さらに研修修了者が集まる第1回のミーティングを行うこともできました。明日すぐに紹介できる親子あそびをみんなで楽しく学んだり、日頃きょうだいと関わる中で感じていることを共有して励まし合い、全国のシブリングサポーターのネットワーク作りの第一歩を踏み出しました。今後もミーティングを定期的に開催し、各地の実践とノウハウを共有・検証しながら、士気を高めることを目指していきたいです。
 
(残された課題)
 研修ワークショップに参加してくださった方のアンケート結果や、研修修了者が主導してきょうだいのための新たな取り組みが増えている状況から、このような研修ワークショップのニーズと効果があることがわかったので、今後も引き続き各地で開催したいと思っています。
 今年度は病院では1回しか開催できなかったのですが、病院で開催すると次の日からきょうだいへのまなざしがぐっとあたたかくなることを実感しており(「これまでは子どもの退院時に、入院していたお子さんと親御さんへのメッセージを書いた色紙を渡していたが、明日からきょうだいへのメッセージも加えます!」と言って早速実践してくださることもありました)、受け入れ先になっていただく病院を増やしていくことが課題の1つです。
 もう1つの大きな課題は、開催地によっては研修ワークショップを開催すればするほど赤字になってしまうことで、内容や価格設定、広げ方などに検討が必要だと感じています。
 地域でも、病院でも、きょうだい支援の輪が広がるよう、引き続き考えていきたいです。

(活動の背景・社会的課題)
 15年の活動を通して、きょうだいたちが抱えるしんどさの中には、社会のあたたかな理解と見守りがあれば解決できる部分が大いにあると感じてきました。研修ワークショップを通して、医療や福祉分野にきょうだい支援を担える人が増えていくことはもちろん大切ですが、「きょうだいにサポートが必要なんて考えたこともなかった」と興味を持って参加してくださる一般の方がおられたことに大きな希望を感じています。きょうだいたちが安心して自分の人生を自分らしく過ごすことができるように、きょうだいも当たり前に大切にされる文化を作っていくために何が必要なのか、これからも試行錯誤を続けながら考えていきたいと思っています。

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